第32回 国際架橋書展 受賞作品
本年の作品は「維摩経」(ゆいまきょう)という、お経の第八章 佛道品(ぶつどうぼん)の一節です。様々な出来事が起きている昨今、身近なこと、世界のこと、種々に起こる出来事が少しでも良い方向に進んでいくことを願いこの一節を選ばせていただき、作品の最後に物事の安寧なあり方の象徴として、「円相」を書きました。
令和元年の記念すべき年に、この作品が受賞の栄に浴し、ご指導いただきました先生方、応援してくださった皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
令和元年12月吉日 吉田琴泉
維摩経について
聖徳太子による「三経義疏」。「維摩経」「勝鬘経」「法華経」の三経を注釈したもの。日本初の本格的な注釈書と言われています。漢訳やチベット訳しか残っていないと思われていたのですが、一九九九年にチベットのポタラ宮で、日本の大正大学の調査プロジェクトチームがサンスクリット本(ターラの木の葉七十九枚に墨で筆写)を発見しました。
語られているテーマは「菩薩道」です。菩薩として生きる道とは
どのようなものか、それがこの経典の柱の一つですが、
ここに出てくる「菩薩」は「苦悩の中を生き抜こうとする
私たちが進むべき方向性」のことそんな感じで・・・・・。
(なりきる すてる ととのえる 著者、釈 徹宗より)
劫中有刀兵 またさらに 兵火おこらば
為之起慈悲 そがために 慈悲をおこして
化彼諸衆生 もろびとを 教え導き
令佳無諍地 平和なる 地に住まわしむ
若有大戦陣 戦陣を 見しそのときは
立之以等力 兵力を 等しからしめ
菩薩現威勢 みずからは 威勢をあらわし
降伏使和安 伏せしめて 和平ならしむ
争いごとが起これば慈悲の心を起こして、人々と語らい、
平和なる地へと住まわしむ。
戦陣を見たときには、双方の戦力が偏らないようにし
自らは勇気を持って和平を提案する。
他者に関わり、社会に関わり、安寧な地域を創っていくことこそ
「空の実践」だと詠います。もし、それらにとらわれがないなら。
執着から離れて日々を生き、慈悲に満ちた社会に向けて活動する。
それが「空の実践」です。
(なりきる すてる ととのえる 著者、釈 徹宗より)